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 ■vol.17 日々の生活で使う水と生活排水

(キーワード:水、資源、生活排水)


前回のブログで限りある水資源が地球温暖化や世界の人口増加によって不足することが予想されていると書きましたが、その貴重な水を私たちは日々の生活でどのように使っていて、どのように大切に使うことができるのでしょうか。

私たちは、一人当たり1日に250リットルの水を使用しているそうです1。日々の生活で使っている水は生活排水となって下水処理場へ流れていきます。生活排水は台所、トイレ、お風呂、洗濯など日常生活からの排水を指し、し尿以外の排水を生活雑排水といいます。また生活排水の汚れの度合いを表すものにBODという指標が使われています。BODは水中の微生物が水の汚れを分解する時に使う酸素の量のことを指し、BOD43グラムの汚れは約4300リットルの水に溶けている酸素を使うことになります。下記の表によると生活排水のBODの約10%、4グラムが洗濯からの排水他となっています。洗濯の頻度によりこの割合も変動するものと思われますが、生活排水のBOD全体の約1割という数字は決して小さいものではありません。


(参照:環境省ホームページ2


生活排水は下水処理施設で処理して川に流し、その水が海に流れます。海水が水蒸気となって雲となり、雨を降らし、その雨が川に流れたり、地下水となったりして海に戻っていきます。私たちの生活では主に川から水を利用しているので、水がどう循環しているかを考えれば、生活排水をなるべく綺麗に保つことは、私たちが飲んだり使ったりしている水を守ることに繋がります。また下記の図からもわかるように、私たちの生活排水は様々なプロセスを経て、川に戻り、またその過程ではさらに多くの水が使われていることがわかります3


(参照:政府広報オンライン ホームページ)


水資源を効率良く使うには、日々の生活で具体的にどのようなことに気をつけたらいいでしょうか。東京都環境局が示している行動指針によると、排水となる水に異物を流し込まないようにすること、汚れや油を流さないようにすること、洗濯は生分解性の高いものを使って、糸くずは排水に流さないようにフィルターをつけることなどがあげられています4。また糸くずだけでなく、近年着目されているマイクロファイバーの流出も減らすようフィルターを使うことも水を守る上では大切です。マイクロプラスチックやマイクロファイバーなどの微小プラスチックが下水処理施設を通り抜けて川や海に流れ出ているというのは最近注目されている問題です5


(参照:東京都環境局ホームページ)


洗濯に加えて気をつけたいのが家庭のBOD全体の4割を占める台所からの排水です。みそ汁1杯やラーメンのスープを直接排水口に流した場合、それを分解するには1600リットルの水が必要になるそうです。お米のとぎ汁2リットルでは1260リットルの水、牛乳180ミリリットルでは2800リットルの水が必要だとされています。お米のとぎ汁は排水口に流してしまう方も多いのではないかと思いますが、それを植木や鉢植えにあげて、排水口には流さないようにと埼玉県では対策を紹介しています6。油は特に分解が難しいので、なるべく再利用するか、新聞紙や布などで吸い取って生ゴミと一緒に捨てるという方法が紹介されています。


このように様々なものを分解するのに多くの水が必要で、その水資源も地球温暖化や人口増加の影響を受けて不足していくことを知ると、日々の生活の中で節水をすることや、水を汚染しないように気をつけることの重要性が理解できます。洗濯においては、洗濯量に適切な量の洗剤を使うこと、より環境負荷の少ない洗剤を選ぶこと、すすぎ回数の少なくて済む洗剤を使うこと、まとめ洗いをして洗濯回数をなるべく減らすこと、糸やマイクロファイバーを取り除く様々なグッズ(ネットやプラスチック製のボールなどが開発されている)を活用すること、節水機能のついた洗濯機を使うことなどが考えられます。行動のひとつひとつに気をつかって生活することで水資源への負荷を減らしていくことができます。便利で快適な暮らしを追求しながらも、その中で地球資源を有効に使っていく方法を模索し、日々の生活の中では出来るところから実際に行動に移していくことが大切だと思います。