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 ■vol.18 アメリカの洗濯事例(ブログ番外編)

(キーワード:洗濯、多様性、アメリカ)


9月1日(火)に未来洗浄研究会第2回セミナー「サステナブルな洗濯を考えるー水とエネルギーの視点から」をオンラインで開催しました。その際、冒頭にご紹介したアメリカの洗濯事例をブログでも詳しくご紹介したいと思います。

Future Earthでプログラムコーディネーターとして勤務しながら、未来洗浄研究会のセミナー企画やブログ執筆を担当しています(筆者プロフィールはこちら(英語))。約3年半前に日本からアメリカ・コロラド州に移住し、アメリカから勤務していますが、そのコロラド州での洗濯が日本での洗濯とどのように違うのか、我が家の洗濯から気づいた点をご紹介したいと思います。

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こちらが、私が使っている洗濯機・乾燥機です。ニューヨークなどの地価が非常に高くスペースの限られた地域では洗濯機・乾燥機のないアパートがまだ多くあり、街中にコインランドリーがありますが、コロラド州のような比較的スペースのあるような州では各家に洗濯機・乾燥機を置く専用の部屋があります。我が家も同様で洗濯機・乾燥機を
置くためだけの小さな部屋があります。洗濯機のサイズは4.5 cubit feet (約130リットル)、1回で約9キロ程度洗濯できるサイズだそうです。私の実感だと9キロ以上入ると思うのですが、日本のドラム式洗濯機より一回り以上大きい印象です。重量感もあり、洗濯機は約95キロとのことで、どうりで私一人では全くビクとも動かないのがよくわかりました。こちらの洗濯機・乾燥機はアメリカのメーカー、Whirlpoolのもので、アメリカの環境保護庁(EPA)が認証しているエネルギースターの認証マークが入っています。HE(High-efficiency)洗濯機で水や温風の温度、洗濯・乾燥時間も自分で設定できるようになっています。日本の洗濯機と違い、水とお湯の両方にホースが繋がっていてお湯でも洗濯できるようになっています。

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エネルギースターのウェブサイトには各メーカー、モデル別に環境負荷をデータで表示しており、洗濯機・乾燥機両方を検索することができます。購入を検討している場合は、欲しいサイズやメーカー別に環境負荷を比較することができ、購入可能なお店へのリンクも貼られているので非常に便利です。私が使っている洗濯機の年間の水の使用量は4210ガロン(約15,940リ
ットル)、電気使用量は89kWhとなっていました。また洗濯機を買う際にどういうことに気をつけたらいいかということも紹介しています。必要な洗濯機のサイズをよく検討すること、エネルギースターのマークが入っているものを選ぶこと、またIntegrated Modified Energy Factor (IMEF: 使用するエネルギー効率を測定したもの)が高いもの、Integrated Water Factor (IWF: 使用する水の効率を測定したもの)が低いものを選ぶように勧めています。IMEF、IWFともにエネルギースターのウェブサイトにモデル別に掲載されています。

エネルギースターのマークが入っている洗濯機は、マークのない洗濯機に比べて水の使用量が25%少なく、エネルギー使用量も33%少ないそうです。入水温度をセンサーで感知でき、高圧スプレーですすぐので水の使用量が少なくて済むこと、効率的なモータを使っているので回転が2~3倍早く脱水がしっかりできるので乾燥時間が減るということです。また環境に優しい洗濯方法も紹介しており、まとめ洗い、水洗い、外干し/部屋干し、短時間の乾燥、付属している衛生・清潔(高温殺菌できるもの)モードは避けることなどが書かれています。

アメリカの一般的な家庭では年間に約300回洗濯しているそうですが、我が家は出来る限りまとめ洗いをして洗濯回数を減らしています。2名分の洗濯物を各週1回ずつ、その他タオルやシーツなどを週1回洗濯しています。週3~4回程度、年間で約192回の洗濯をしていることになります。私の洗濯物はラックを使って部屋干ししています。コロラドは乾燥しているので、年間300日は晴れると言われるほど晴れの日が多いので、部屋干しでも半日程度で乾いてしまいます。生乾きにもならないので、嫌な匂いもせず、乾燥機を使わなくても困っていません。ただ晴れの日が多いなら外で干したいと思うのですが、それをやっている家庭は周りになく、景観に対する配慮やプライバシーの観点、文化的背景からなかなか日本のように外干し文化がないのが残念な点です。その土地の気候や文化が自分の洗濯習慣に影響を与えていることを実感しています。

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洗剤も大容量で1.17ガロン(4.43 リットル)で売られています。日本の洗剤のサイズより大きく、女性には重たいです。香りの強い洗剤や柔軟剤も多く、散歩していると換気扇から洗剤の香りが漂ってくることも多々あります。私は香りが苦手なので無香料で、なるべく環境負荷の少ない洗剤を使っています。また最近、パッケージにプラスチックを使っていない洗剤を購入して使ってみました。紙のような洗剤になっていて、細かくちぎって投入します。ドラム式洗濯機ではしっかり溶けるかどうか心配だったのですが、洗剤が残ることもなく汚れもしっかり落ちていました。紙のようになっているので旅行にも持って行きやすいそうです。乾燥には乾燥シートを使わずランドリーボールを使っています。これが柔軟剤を使わなくてもふっくら洗濯物を仕上げてくれるので助かっています。洗濯ではネットを使用していますが、それに加えて今後はマイクロファイバーを取り除くプラスチック製のボールも活用しようと思っています。

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日本での洗濯とアメリカの洗濯の一番大きな違いは、やはり乾燥機の使用頻度だと思います。アメリカの標準的な家電製品のエネルギー使用量を見ても、乾燥機が一番多くエネルギーを使っています。外干しを推進していくことが、州レベルもしくは群/市レベルで必要なのかと思います。全てを干さなくても、シーツやタオル、洋服などが外に干せるようになるといいなと
思いながら乾燥機を使う度に罪悪感を覚えています。外干しすることがタブーでなくなるには時間を要するかもしれませんが、夏には深刻化する山火事、春と秋の急な大雪など異常気象を実際に感じることの多いコロラド州では環境意識の高い人たちがいるのも事実です。地産地消やコンポストなどは多くのスーパーで実施されており、買い物の際にはマイバッグを持参する人や電気自動車を運転している人も多くいます。環境負荷を減らすために乾燥機の使用を減らしていくことを個人レベルの活動ではなく、政府を巻き込んで実施してくことが必要なのかと思っています。

また再生可能エネルギーの活用に関してコロラド州は積極的に取り組んでおり、風力発電や太陽光発電をよく見かけます。各家庭でも太陽光パネルを設置している家をよく見かけますが、設置にかかる平均的な費用は14000ドル〜18000ドル(約150万〜190万円)と言われており、決して安くはありません。かかった費用に対して税額控除や補助を受けられる地域もコロラド州ではありますが、簡単に設置できるものになっていないというのが現状です。再生可能エネルギーが政策レベルでさらに推進されて、生活者にとっても購入しやすく活用しやすいものになる必要があると課題を感じています。

湿気の多い日本では汗をかくので、私自身の洗濯回数もアメリカにいる時より多かったと思います。コロラドは非常に乾燥しているので日本のように汗をかかず、複数回洋服を着ても気になりません。清潔に関する価値観も違うというのもあると思います。その土地の気候や文化、価値観によってできる洗濯方法が違うことを海外で暮らすことで実感しています。その場所にあったサステナブルな洗濯方法というものを模索していく必要があるのだろうと思っています。

※未来洗浄研究会第2回セミナーの報告書や発表資料はこちらからご覧いただけます。是非そちらもご活用下さい。